2017年5月28日日曜日

【第二章:スズと風のサーカス団シルフ 九】




 『フラ恋』は『カルテット』に通じるものがありますね♪(^ェ^)。+.。゚:;。+

 ちなみに『櫻子さん』も面白いですwΣd(ゝω・o)☆。+.。゚:;。+




以下、 【第二章:スズと風のサーカス団シルフ 九】です。




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 【第二章:スズと風のサーカス団シルフ 九】


気がつくとスズは、吊るされていた。

テント内の舞台後方、中心近く。高さは体育館の天井ほどだろうか。
その天井付近の機材から下がる受け手用の空中ブランコに、ヒザや
足首をひっかける形で、頭を下にして宙ぶらりんになっている。


もちろん最初からこんな状態ではなかった。

スズの全身を眺めた後、フーカは彼をテント内の舞台上に案内した。
それまで物置や舞台裏など、珍しくはあるがどちらかと言えば
ぱっとしない場所を案内されていたスズは、思わず息をのんだ。

テントを支えるようして、巨大な三本の樹が屹立していたのだ。
その木々は森の中で何千年も経た樫のような、
勇壮かつ神秘的な雰囲気を醸し出していた。

近づいて良く見て触ってみれば、それは舞台の骨組みなどを
隠している作り物の木だという事が解ったが、
それでも充分に迫力と、神聖さが感じられた。

真下から見れば天井付近を走るワイヤーや、
鉄筋のようなものも見えるのだが、観客席側からの視界は
葉の作り物で覆われているため、初めて訪れた者は
本物の太古の森の中に迷い込んだような気持ちになるだろう。

最も巨大な一本は舞台の中央最後方にあり、
根元から大きな洞が開いたようになったそれは、
舞台裏と舞台を繋ぐ出入り口でもあるようだ。

残りの二本は、その樹を挟むように、
テントの東西の端に一本ずつ立っていた。
樹の間には、網目の大きさの違う三種類のセーフティネットが
三重に、まるでハンモックのように張られている。


フーカは舞台裏から向って左側の一本の樹に
ツカツカと歩み寄っていくと、不意にブーツを脱ぎ始めた。

そして「あんたも靴は脱いで」と、
スズにアゴで樹の上の方に登るように示した。
観客席から見えない位置に廻ると、
樹の内部には登りハシゴなどがあるのが解る。

フーカは「高いとこが苦手じゃ話にならないなぁっ!」
と言いながら屈伸運動をしている。

リンクは二人の後を心配そうについて来ていたが、
「怖いならやめといたほうがいいにゃ、
無理して怪我するのが一番怒られるニャ!」
とスズの衣装の袖を引っ張りながら、
ビクビクと辺りを見回して囁いた。

「大丈夫、高い所とかは別に平気だから」
スズは荷物を床に置き、腕まくりしながらリンクに笑ってみせた。
フーカに聞かせたかったのもある。

間髪いれず少女の舌打ちが聴こえた。

というか、こっちの世界に来る時に不可抗力的な出来事で
もっと高い場所から落とされているし、セーフティネットも
ある場所で自分の意思で登るだけマシだとか、
靴を脱ぎながらスズはそんな事を思っていた。


建築構造そのものがしっかりしているのもあり、
登っている時の恐怖はほとんどなかったが、
いざ樹上に立つとその高さにさすがに足がすくんだ。

だが足場は思っていたよりは広く、安定していた。
下の方を見なければまあまあ平常心は保っていられそうだ。
スズは自分が高所恐怖症で無い事を神に感謝した。

彼の後から登ってきたフーカは、平然を装うスズを無視して、
何やら樹の内側に設置されているボタンを操作しはじめた。

するとゴウンゴウンと音を立てて、天井のワイヤーや滑車が動き、
見た事のない形の空中ブランコが目の前に降りてきた。
スズはなんとなく棒一本の空中ブランコをイメージしていたのだが、
巨大な四角形のそれは、公園の遊具のブランコを鉄パイプで作り、
座る板の部分を取ってしまったような形をしている。

「ちょっとこれ持ってて」
フーカはそう言うと髪飾りを外してスズに渡した。

赤い四枚の花弁の花を模しているのかと思われた髪飾りは、
良く見ればガラスのような物質で作られた風車のようだった。
花びらのような羽は光の加減によって、
濃い紅色や桃色のようにも見える。

フーカはひらりと、まるで体重を感じさせないような動きで、
ブランコの鉄棒に足をかけて逆さにぶら下がった。

「おお」
スズは純粋にすごいと思ったが、その体勢だと当然フーカの
短いスカートは丸々めくれてしまったので、思わず目をそらした。

「ヒザと、足首のここをしっかりかけるの。って聞いてる?!」
もっとも“見えてもいいスパッツ”のような物をはいているので、
フーカの方はなんら気にしてはいない。

足の方だけに意識を集中し、
チラっと確認するとスズはコクコクと頷いた。

「じゃあ、はい。やってみて」
軽やかにブランコのバーから降りると髪飾りを受け取り、
スズにブランコを指し示す。

実際の高さはあるが、足場はしっかりしているので、
やっていることは地上での鉄棒とあまり変わらない。
フーカに比べればだいぶ動きはぎこちないが、
このくらいなら自分にも余裕で出来る。
スズは素直にブランコに足をかけてぶら下がった。

「はい、じゃあそのまま動かないでよ」
何かを引き出す音が聴こえたかと思うと、
腰の辺りにベルトのような物が巻かれ、カチッと止められた。

「命綱だから、取れないようにしっかり念じてね」
背中を叩かれた。

すっと血の気が引くのと同時に、腰に手をやる。
念じるというよりはパニック的に
『取れたらまずい』と思ったとたんに
ベルトはスズに密着するように締まった。
これも不思議な石の力の仕組みによるものだろう。

「下手に動いたら落ちるからね! じゃあ行くよ!」
フーカは何かのスイッチを押した。

ブランコは一度ガクンというと、スズをぶら下げたまま、
何もない空中に向かって進みだした。





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Nekotamibnneko